怠惰と快楽の技術

あるいは勤勉の敗北

20200601

 無職1ヶ月記念!と思っていたのだがなんかどうも今日からマジの退職扱いらしい。変に早めにバイトとかしなくてよかったかも。

 朝はマリインスキー劇場アッティラ」(2010)を見る。イ、イルダール様〜!胸毛がふさふさでございますね!なんでそんな衣装のデザインに??(急に我に返る)

 昼はMET「サロメ」(2008)を見る。男子チームvs女子チームのタッグマッチものプロレス演出とかできそうだなと思った(最後の「あの女を殺せ!」をどうするかが考えどころだが)。

 夜はウィーン国立歌劇場「アラベラ」(2017)。演奏と歌がいいので観れてしまう。付添人がお暇を出される最後にちょっと感動した。

 3度の飯より自分語りが好きなのでミリしら羅生門の参考文献メモを書いた。

 

ミリしら羅生門の参考文献メモ|暴力と破滅の運び手

https://note.com/violence_ruin/n/n35b8d2ce3c3b

20200531

 こんなもの(https://note.com/violence_ruin/n/n39749d133471)を書いたバチが当たったのか生活の全てがインターネットになってちょっと参ってしまい、ゆっくりオペラを見るどころでは無かったのだが、今日はゆっくりできた。

 朝はパリ・オペラ座の配信で「ボリス・ゴドゥノフ」。イルダール様〜!とペンラを振りながら観た。この人本当に父親とか王様の役が様になるのよ。歌も堂々たるものだし。

 午後は知人と誘い合わせてMET「愛の妙薬」(2018)。プリティ・イェンドのアディーナもマシュー・ポレンザーニのネモリーノもそれぞれ大変キュートでほんわかした。ポレンザーニほんまに当時50歳か?

 夜も知人と誘い合わせてロイヤルオペラの「サンドリヨン」。歌手はたいへん良かったんだけどなんか衣装と群舞がとにかくやばくてビビってしまい、そっちの印象が強く残っている。最近配信で見たロイヤルオペラのオペラで1番良かったかも。

 オペラを観ながらエッセイを書きました。なんでかというと今日がデイリーポータルZ新人賞の締切だったからだが、いやこれ出しても通らへんやろな。8000字あるんで頑張って読んでください。

 

 仕事を辞めてから1ヶ月私がしていたこと|暴力と破滅の運び手 @violence_ruin #note https://note.com/violence_ruin/n/ne972f26b95a7

 

 

20200522

 朝はMET「トゥーランドット」(2019)を見る。慣習的演出をちゃんと見たのははじめてかもしれない。このまえの新国のトゥーランドットがリューの自害にショックを受けて後を追う解釈は確かに素晴らしいし、今度はトゥーランドットが今まで殺した王子たちとリューの亡霊に追い立てられてカラフの元に走るみたいな爆発追いかけっこエンドみたいな演出ってどうかしら、とかぼんやり思った。

 昼はNTLive「欲望という名の電車」(2014)。ジリアン・アンダーソンのブランシュがとにかく素晴らしいと思った。台詞のリーディング一つ取っても凄かった。アクセントの部分を長く伸ばすあの特徴的な発音は、ある種の艶っぽさから段々と現状を否認する子供のそれへと形を変えていき、最後の台詞ではそれも失われる。見たあとにsaebou先生の感想を読んでなるほど〜と言っていた(小学校の芸術鑑賞会とか除くと、演劇って、ライビュ含めて3回目とかで…何もわからない…)。あとスタンリーは個人的には見ていてguilty pleasureを覚えてしまう造形だったのだが、戯曲の作者がフラタニティの加入儀礼で男たちに尻を棒で叩かれて“扉”を開いてしまったみたいな記述をあとで見せてもらって放心してしまった。

 夜はノルウェー国立オペラのブリテン『ビリー・バッド』。なんかちょっと1回見ただけではどうにも判断がつかない演出だった。クラッガートはビリーにキスしようとしてたし、船長も新兵とモブ水兵のキスを見たあとにビリーを救うべきか救わないべきか迷ってたし(=ビリーに対する愛情を取るか地上の秩序を取るかの逡巡? あとビリーを満足させた光景を船長も見ているのは…)、みんなビリーを愛していたんだなって思ったけど本当にそんな演出だったんだろうか。この“理解”は正しいのでしょうか。

 その後GYAOで『長く熱い週末』を観たのだが、私、80年代映画、見方がわかんねえな…とおもった…。

 

20200519〜21

0519

 午前にウィーン国立歌劇場の配信で「神々の黄昏」を観て画面にブーイングし、午後はMET「イドメネオ」を観る。マシュー・ポレンザーニがよかった。夜はロイヤルオペラの「アナスタシア」。ラスプーチンを倒していた。チャイコフスキーの初期の交響曲ってバレエ曲っぽいな…と常々思っていたのだが、マジでバレエ版が複数あると知った。

 

0520

 午前中にMET「ローエングリン」を観て、午後はオランダ国立オペラの「ムツェンスク郡のマクベス夫人」を観て、夜はモネ劇場の「愛の妙薬」(ビーチが舞台、海の家の女主人と若いバイトの恋愛バトル、妙薬はレッドブルカーの怪しいおじさんとレッドブルガールたちが運んでくる、というすげー演出だった)。その後ポーランド国立オペラで「トスカ」。VOGUEっぽい(※この語り手は女性のファッションに対する知見に乏しく一定の基準を満たすとすべてVOGUEに見えます)トスカがすげー歌姫っぽくてよかった。カヴァラドッシはちょっと負けてたな。

 

0521

 午前中にMETの「仮面舞踏会」を観る。イカロスの肖像画がバーンと吊り下がっていて、サイゼリヤに行きたくなった。

 午後は数日ぶりの散歩(ブックオフしか行き先がない、500円分本を買った)をしたあとマリインスキー劇場の「椿姫」。回転する水槽みたいなやつで部屋を移動するシーンを見せていた。

 夜はヴィスコンティの「ベニスに死す」を見た。美少年が振り向くシーンと芸術問答のシーンのすべてでゲラゲラ笑ってしまいました。あたしってば耽美のセンスがないんだわ。でもダーク・ボガードの老いぼれ方とどうしようもないのぼせ上がり様は素晴らしかったし、ヴェネツィアはきれいだったし、嫌いじゃない。

20200518

 朝起きてウィーン国立歌劇場ジークフリート」(2017)。ヴォータン役のトマーシュ・コニエチュニーを10時間くらい見た計算になるので、なんか退場のとき謎の感慨が…。

 午後にちょっとだけ音楽教室の練習室で発声練習をさせてもらう。自分ではなく部屋を鳴らす感じが一瞬掴めたような気がするんだけどすぐわかんなくなっちゃった。呼吸法とか立ち方をもっと徹底しないとだめなんだろうなあ。

 ナショナル・シアター・ライブ『バーバーショップ・クロニクル』。ギャグがわかるほど英語字幕を追えなかったのはちょっと残念だけどわかったところはけっこう笑えた。転換を黒人歌手の有名ソング?を歌いながらやったりするのも楽しかった。

 夜は友人と時間を合わせてオンラインMET『ナブッコ』(2017)鑑賞会。セットと衣装とメイクすべてが合わさって謎のキッチュさが生まれていて、「バブル期のパチ屋かドンキ」と思わず言ってしまったのだが、あの有名な「歌は黄金の翼に乗って」とかになるともうそういうのが全部気にならなくなってしまうのだった。

 

20200517

 R18の『ヴォツェック』in田舎のスタンドアロンなゲームセンター、みたいな夢で6時くらいに目覚めてしまい、ちょっとうだうだしたあとにジュネーブ大劇場のマイアベーアユグノー教徒』(2020)を観る。英訳付きのリブレットを読みながら鑑賞したので正直映像を追うどころではなかったのだが、それでもけっこう満足した。すごいオペラだ。

 お昼はレトルトカレーで済ませ、ハンブルクバレエ団のストリーミングでノイマイヤー振付『幻想 白鳥の湖のように』(2001)を観る。マシュー・ボーンのせいで白鳥の湖の序奏を聴くと涙ぐんでしまう身体になってしまったのだが、ノイマイヤー版は序奏に入る前がアレなのでだめだった。白鳥の群舞などに至るまで美しい振付で、また精神病棟に戻って城の模型を観ながらひとりで踊るところで『懐かしい土地の思い出』の“瞑想曲”が流れたりする趣向もよかった。白鳥の湖の王子に同化してオデットを射止めたいと願う一方で現実の女性に触れることができないことに対する苦悩を抱えるルートヴィヒ2世、というのがコンセプト。なぜその同化願望が生じてしまったのかを考えるとその苦悩が原因であるように見えるのがつらいですね。

 夕方はMETでヴェルディリゴレット』(2012)。オペラ自体は気に入った。そのあと英国ロイヤルオペラハウスのバレエ『変身』を観ながら読書会に参加。『変身』、グレゴール・ザムザがチョコまみれでおいしそうに見えてきた。そのあと読書会のメンバーとアンリ・コルピ『かくも長き不在』を観る。ジョルジュ・ウィルソンが常に困り顔でよかった。

 流石に尻が死んだけど、明日はMET『ナブッコウィーン国立歌劇場ジークフリート』NTL『バーバー・ショップ・クロニクルズ』の予定です。

20200516

 朝起きてMETの『ランメルモールのルチア』(1982)。ルチアの彼氏の首飾りが完全におジャ魔女どれみの見習いタップで、出てくる度にガン見してしまった。

 
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 その後ロイヤルオペラの『椿姫』(2009)。ルネ・フレミングは良かったけど、この前配信されていたMETの演出(2012)が強烈だったのでどうしても比べてしまい、ちょっと無難に感じてしまった。

 午後は知人と励まし合いながらウィーン国立歌劇場の『ワルキューレ』(2018)。徹頭徹尾無力というか、家庭内でしかイキれない上に下半身のだらしないDV父親、というヴォータン像を『ラインの黄金』から一貫して見せているのはわかった。

 流石に疲れたので夜はだらだらしたり、ちょっとだけピアノを弾いたりした。