怠惰と快楽の技術

あるいは勤勉の敗北

20200618-21

0618

 モネ劇場の「ローエングリン」の第2幕以降を観る。凄まじいプロダクション。

 ウィーン国立歌劇場のタン・ドゥン「マルコ・ポーロ」と新国立劇場巣ごもりシアター「蝶々夫人」を横目に頑張って日記を書いた。

 https://note.com/violence_ruin/n/nec79bcc422eb

 

0619

 頑張ってピアノの練習をしてピアノと声楽のレッスン。Star, vicinoは来週仕上げで、コンコーネの4番とAmarilliを歌ってくるようにとのこと。

 面接で大変な目に遭ったのでいよいよ再就職無理なのではないかという気持ちになって気分が悪くなり、そのまま何もできないまま寝る。

 

0620

 悪夢を見て中途覚醒を繰り返す。電気代が13000円くらいになって失神しかける夢と、両親と姉と共に東欧旧共産圏あたりのくそボロい団地アパートに引っ越して早速虫に体を噛まれる夢。

 起きてまずアムステルダム国際劇場のイヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出「オープニング・ナイト」を観る。カサヴェテスの同名映画のアダプテーションで、設定を演劇からテレビ中継のドラマ?に変え、舞台上に置いたたくさんのモニタに”中継映像”を流すという趣向。舞台上手に”観覧席”と監督と脚本家の席が置いてあって、下手は楽屋とか。アダプテーションは結構見事だと思うけど、最後はやっぱお互いの脚を持って終わりにして欲しかったな……。

 その後カラオケに行って歌の練習をする。小さい声でもいいから、完全に脱力した時の喉の状態を保ったまま高い音まで移動すること、息を吸ってもその状態が崩れないこと、などを意識して練習していくべきだなと思った。コンコーネ第1番の冒頭はそういう意味ですごく"使える"エチュードだ。

 帰ってきてからレオンティン・プライスが出てくるMET「運命の力」を観つつ久しぶりにお絵かきをする。

 

0621

 朝はMET「アクナーテン」を見つつぼんやり今後について考えたりする。それからHBOの「ウォッチメン」FreeWeekendを6話まで観る。なぜか最後の3話だけリージョンの問題で再生できなかったのでそれはAmazonプライムスターチャンネルのチャンネルで観ることに。

 夜はサンフランシスコ歌劇場の「サロメ」を観る。ナラボートが自刃した後の刃を見て微妙な顔をするサロメはいったいなんだったのか。

20200617

MET「セミラーミデ」(2018)。イルダール・アブドラザコフがトップレスでアッシリア人をやっていて眼福だった。アンジェラ・ミードもよかった。モネ劇場「ローエングリン」も第1幕だけ。

Zoomで面接受けたけど微妙な手応えだった。ありのままの私、無力。

夜はGYAO増村保造しびれくらげ」(1970)。クリシェは誇張されすぎて異様な抽象的質感を持ち、渥美マリは常に異様に“いい女”だし渥美マリの彼氏に至ってはもはやミノタウロスみたいな存在になっているのだが、それでいてペースとか温度とかが不変。恐ろしいバランスの取り方だし何を見せられているのかわからない。BGMがずっと一緒なのも憎い演出だと思う(すごく古風なパッサカリアとかを聴いているような気持ちになる)。あと8日。

https://gyao.yahoo.co.jp/title/00998:v00917

20200615-16 オランダ国立劇場《サロメ》、グローブ座《夏の夜の夢》 他

0615

 朝起きてすぐオランダ国立オペラのイヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出《サロメ》を観る。現代に移した演出で、なんとヨカナーンが全身タトゥー&ドドメ色タンクトップのおっさんなのである。マフィアのヘロデ王と下っ端ドラッグディーラーのヨカナーンみたいな演出だったのか? ヨカナーンは割とサロメに気があるというか同情的?な感じで、断首されず血まみれのまま銀の盆で運ばれてくる(しかも動く)。ドドメ色のタンクトップにはよく見るとサロメの服の色と同じ色のところがあって、最後それがヨカナーンの血に塗れるというのもよかった。また七つのヴェールの踊りでは後ろの壁にヨカナーンと踊っているサロメの映像が投射され、ヴェールを被るのは周りにいる人間たち、というのも不気味だった(曲が一番激しくなるコーダでピタッと動きを止めるサロメ)。しかしこう見てみると「サロメ」自体ヨカナーンくらいしかサロメに対等の立場で話をしないんだなという気付きがあった。

 午後は友人と誘い合わせて東京の映画館に行き、ズラウスキー監督の「ポゼッション」を観る。とにかく女が叫んで髪を振り乱すというやつなのでなぜか黒沢清を思い出した(なぜ…) とにかく円運動を繰り返すカメラ、圧迫感のある顔面アップ、絢爛な光をたたえた異形の造形など割と気に入った。

 その後IKEAに行って豪遊した。レストランがすごく学食っぽくて懐かしさを感じる(あとドリンクバーが妙に充実している)。スモークサーモンとか美味しそうだった。f:id:violence_ruin:20200617003842j:image

IKEAだったので大興奮してしまった。食器がそれなりの質でかなり安いのでここで揃えりゃよかったなと後悔した。鮫とコップを買った。

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あとブックオフ須賀しのぶの「キル・ゾーン」「流血女神伝」がほぼ揃っているのを見て、110円の文庫本を40冊弱一気買いするという蛮行を働いてしまった……(実はkindleで持ってるんだけどね、あとがきが無いのが不満で……)。

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0616

 朝カラオケに行って歌の練習したあと、モネ劇場の「ベアトリスとベネディクト」を観る。台本を改変して展開を変えるというあんまり出会ったことのない演出だった。エローに横恋慕した楽長のせいでエローとクラウディオが破局し、その直後にベアトリスとベネディクトが結婚するという改変が入る。あんまりうまく行っている感じはしなかった。

 夜はグローブ座の「夏の夜の夢」。これは本当に面白かった。この前見たOldVic+BristolOldVicの「怪物はささやく」で主人公をしていたマシュー・テニスン演じるパックが不気味かわいい感じで、ジョン・ライトのオーベロンがめちゃくちゃハグしたりチューしたりしててよかった。職人たちがとにかくギャグに全振りしていて、ラストの素人演劇がすごく面白かった。観客も大ウケしてた。現地時間で28日まで見れます。

www.youtube.com

20200614

 これからどう生きるか考えてたら気分が悪くなったけど、小説とか映画とかからちょっと離れて(いや元々そんな真面目にはやってなかったけど…)働きつつ音楽とかを真面目にやるみたいな方向にシフトしようかなって思ったらちょっと気が楽になった。

 

 🐮オペラ座ラ・ボエーム

 貧困状態を宇宙空間での遭難と不時着と重ね合わせるのは意図としてはわかるし読み替え自体は見事だと思ったけど、あんまり舞台上で起こっていることの意味が掴みきれず(あれは走馬灯って感じなの?それとも完全な幻覚?)振り落とされてしまった。

 🐮グローブ座「ウィンザーの陽気な女房たち」

 めっちゃ笑った。観客もドッカンドッカンなってた。ギャグの質感がほぼクレヨンしんちゃん

20200612-13

 0612

 朝うだうだしてからカラオケに行ってちょっと声楽の練習をする。その後いろいろ鑑賞。

 🐮新国立劇場魔笛

 ケントリッジの演出はまあなんていうか何見ても好きにはなれないんだけど、このオペラの大スペクタクルな部分をよく演出していたと思うし、キャストもよかった(特にパパゲーノがキュート)。

 🐮ウィーン国立歌劇場「ヨゼフ伝説」

 裸エプロンの美少年とスズランテープ身体にはっつけた美少年がパ・ド・ドゥを踊るッ!以上ッ!説明不要ッ!みたいなノイマイヤー大先生の強いメッセージを感じました。以上です。

 🐮ルチオ・フルチ「荒野の処刑」

 タランティーノまじでこの監督のこと好きだったんだろうな……と思っためちゃくちゃ変な映画。マカロニウェスタンのほぼ終わりくらいに作られたロードムービーで、お前ほぼ殺人鬼だろというネイティブアメリカンとか出てきて、なんか男しかいない雪山の村で妊婦が出産するのがクライマックスなんです。最後きっちり復讐を果たして謎の犬が出てくる。何なの。

 

 0613

 うだうだした後にモネ劇場でルチオ・カステルッチが演出した「魔笛」を見たんだけどこれがマ〜〜〜〜〜〜〜ジで凄かった。

 

魔笛」の一本めに見るべきとは思わないけど(慣習的演出を見ておかないとどうしてこういうプロダクションが生まれるのかも分からないと思うので)、6月末までなのでぜひ見て欲しい。これはちょっと凄い。批判するだけではなく舞台芸術を作る/見るということが何なのかという業についての話だと私は受け取った。興奮しすぎて人に強火オタクLINE送っちゃった。

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 夕方はみんなでワイワイ「羅生門」で読書会をして、その後モネ劇場の「オルフェオとマジュヌーン」を観る。

 欧州と中東アジアのシアターがコラボレーションをして「オルフェウスとエウリディケー」「ライラとマジュヌーン」を重ね合わせた作品。メインキャストは欧州から二人と中東側から二人ずつのコンビという感じ。歌詞やナレーションには英語、フランス語、フラマン語アラビア語などが入り混じり、発声の仕方も全く違うので、「ラブ最高! ラブは時空や場所を超えて存在する!」みたいな帰結がなんだかスッと飲み込めてしまう感じでしたね。あとめっちゃ複雑な児童合唱パートをキッズたちが頑張ってやっていてよかった。私だったら絶対入りとかわかんなくなってたと思う。

 夜はウィーン国立歌劇場「西部の娘」を観る。コニエチュニーがボンデージで出てきてよかった(オペラを観ている最中何を考えているかがバレる感想やめろ)。見所は虹色の気球で上昇するカウフマンとシュテンメです。

20200611

転職サイトG………nにきた求人に気になるボタン押したりしてた。

 

MET「ヘンゼルとグレーテル」。貧困、ネグレクト、アルコール依存、家庭内暴力…あたりは歌詞を読めば掬える感じがするけど、2幕の悪夢的な樹木人間やシェフたちはちょっとすごかったし、魔女の焼死体を全員で食べるエンドには度肝を抜かれた。(しかも演出のリチャード・ジョーンズはインタビューで「だってオーブンに入れたものは食べるでしょ?」みたいな感じのことをしゃらっと言っててびっくりした)

NTLive「コリオレイナス」。トムヒがコリオレイナス役。オーフィディアスがコリオレイナスの血を化粧水感覚で顔にまぶしたな…と思ったらローマから落ち延びたコリオレイナスにキスするわ裏切られたら泣きながら頸掻き切ってコリオレイナスの血を浴びるわで完全に“理解”が生じてしまった。マーク・ゲイティスがお手本的なリーディングをしていた一方トムヒは終始ボソボソ平淡に喋っているように聞こえてしまった。ある程度はわざとなんだろうけど。

OldVic「怪物はささやく」。母親の死に対するアンビバレントな感情に苦しむ13歳の少年のもとに、ムキムキ上裸おじさん(※家の裏に生えているイチイの樹の怪物)がやってきて…という話。児童文学的によくできていて素直に感動した一方、ムキムキ上裸おじさんはちょっとどうなのよという気持ちにもなった。

ウィーン国立歌劇場「在りし日の宴」。裸ジャケットというナゾの格好で男たちが踊っていた。

20200610

 保険の切り替えとかに必要な書類が何も揃ってないことに気付いて一時は憤死しそうになったものの気を取り直して書類を投函したりメールを出したりした。カラオケで声楽の練習を1時間半。低い声(と言っても基準ドのちょっとしたのファとかミ)が全然響かないとか、iとe以外の母音が全く響かないとか、いろいろわからないことだらけ。オペラ歌手ってなんであんなに口開いて歌えるんだろう。

 MET「イオランタ/青ひげ公の城」(トレリンスキー演出はMETのライビュで2016年にトリスタンを観た記憶がある。40年代フィルムノワールのイメージで作ったという「青ひげ公の城」が拾いもの)と英国ロイヤルオペラ「ジャンニ・スキッキ」(1960〜70年代のセッティングでコメディドラマ風演出、わりに良かった。トランクスいっちょのジャンニ・スキッキ……)を見つつ、求人を見たりしていた。